朝日のやうにさわやかに。

自分が忘れない様に

二月の兵隊

「自らを安心させることの出来ない人間(ぼくらのことだ)は、

他人の記憶を荒らしてでさえ生温い体温を求めなければならない__

まして、そこに種が蒔かれていなかったとしても」


「どうして間違ってしまうのかしら?」


「誰かになりたいと思ったことはあるかしら?」


「同じように思っているの、せめてもう少しだけ、季節がゆっくり流れればいいって」


「どこで間違ったのかしら、何も分からないのよ、わたしはもう、何処へも行けないの」


「このスカート、ちょっと短すぎかしら」


「あの子は耳が聴こえないのよ」


シクレノンの花を大量に積んだタンカーがアフリカへ向かう。

女は絵描きが自らの容姿ゆえに絵のモデルにしてくれないことを気に病み、

絵描きは女が処女でなかったことを今も許していない

女はらせん階段にお気に入りのぬいぐるみを捨て、

絵描きは壊れたオルゴールをネジひとつまで分解し、ボートに乗り込んだ。


「目で見えていれば確実なのか?触れられれば確実なのか?声を聴けば確実なのか?記憶は確実なのか?」


「君が泣くとき、僕は笑い、君が笑うとき、僕は泣く。

いらだちは快楽に、無数の傷はキメ細かな肌に、

理不尽な怒りは契約書に、

埃を被ったミニカーは艷やかな口紅に、

曇りの日はホワイトソースを飲み、晴れたらセックスをしよう」


「全く趣味の悪い映画だ…」


「あいつは隣の部屋の咳払いすら気にするような神経質な野郎だぜ」


「意味はないよ」


「きっとあるよ」


「これが夢なら覚めないよう祈るし、現実ならこの瞬間の為だけに僕は生き続ける」


「大事なことはダイスを振って決める、それが僕のルール」


「お願い」



「手を繋いで」


「パーフェクト!パーフェクト!パーフェクト!」


「おばあちゃん、おばあちゃん、おばあちゃん、ねえ起きて」


「髪の長さは大体このくらい(肩に手を合わせる)」


「大きなスーパーマーケットに一人取り残される夢」


「森で小さな女の子を見たんだ」


「同じ言葉を同じタイミングで言っても、同じようには伝わらないでしょう?だからわたしは求めるの」


「何をさ?」


「完璧な組み合わせ」


ひとつになりたい?


「全く趣味の悪い映画だ…」


「あいつは隣の部屋の咳払いすら気にするような神経質な野郎だぜ」


「盗人は出ていけ」


お願い忘れないでお願い」


「小さい頃大好きだったブリキの兵隊のおもちゃを実家の押し入れから見付けたんだもうなくしたと思っていたのに凄く嬉しいよ凄く嬉しい」


「自分の体が自分のものじゃなくなったときのこと」


「わたしやっぱり何処かで期待してるんだと思う」


「汚い血を流してる」


大きなビジョンに顔を包帯でぐるぐる巻きにした少年たちが映っている。


きみのなまえ


「誰かになりたいと思ったことはあるかしら?」


「同じように思っているの、せめてもう少しだけ、季節がゆっくり流れればいいって」


「どこで間違ったのかしら、何も分からないのよ、わたしはもう、何処へも行けないの」


「このスカート、ちょっと短すぎかしら」


「あの子は耳が聴こえないのよ」


二人はボートの上で夢の内容を語り、それが終わるとほほえみあった。

洗っていない洗濯物が、ボートの端に堆く積まれている。

カラフルな洋服に水しぶきが跳ね、乾いた塩が模様を作る。

二人はあるシャツに刻まれたそれを文字に見立て、二人だけしか知らない言葉を作った。

見えているものでさえ、

言葉でさえ、

変わっていくのを二人は知っている。

それでも、

醜い女は美しくならず、

絵描きは女が処女でなかったことを許しはしない。

この世で二人だけ生き残ったとしても。


「自らを安心させることの出来ない人間(ぼくらのことだ)は、

他人の記憶を荒らしてでさえ生温い体温を求めなければならない__

まして、そこに種が蒔かれていなかったとしても」


「どうして間違ってしまうのかしら?」


「誰かになりたいと思ったことはあるかしら?」


「同じように思っているの、せめてもう少しだけ、季節がゆっくり流れればいいって」


「天気予報、明日雨だってさ。てるてる坊主でも作るかい?」


「わたしやっぱり何処かで期待してるんだと思う」


「育てよう、僕たちで育てよう、決して意味を生まなくても」